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2005年6月 4日

262のメッセージ

昨日深夜(というか今日の未明)は、ワールドカップの予選を見ていた。日本が勝って、試合後のインタビューで中田英寿が登場した。彼がインタビューを受けるのを見るのは楽しみだ。アホくさい問いには、いかにも、“コイツはアホか”といった表情で見下しながら、面倒くさそうに返答するからだ。今回もそうだった。言い換えれば、どうして彼にもうちょっとまともな問いを発しないのか、それも疑問だ。インタビューの担当アナウンサーはあらかじめ決まっているのだろうし、試合中から考えておけばいい。中田やイチローはインタビューになかなか応じないようだが、それでもまともな問いには、きちんと答えている。彼らはインタビューを受けるのが面倒くさいのではない。アホな問いにいらだっているのだ(勝利後に、「いまのお気持ちは」的な)。彼らが具体的なコメントをできるように質問するのは、アナウンサーの義務といえる。

『イチロー262のメッセージ』(ぴあ)を読んでも、いかにイチローがマスコミとの付き合いを実はまじめに考え、現在の状況にいらだっているかがわかる。

“いい記者になるためには、質問は、自分で考えなければいけません。人はみんなそう成長するのですから。いい質問だけにしてください”
“通りいっぺんの答えで終わりにしちゃうことはできません。手を抜くことができない。だからそういうインタビューには出ないのです”
“メディアと選手というのは戦っています。おたがいが緊張しなくてはいけないし、おたがいが育てあう関係だと思います。ですから、妥協はしたくないのです”

自分も競馬専門紙で取材をしていた頃、喋ってくれない調教師には苦労したが、それで鍛えられた。定年の記者から引き継いだ担当厩舎の調教師は、頑固な古株ばかり。なかなか新米記者には喋ってくれなかった。それでも馬のことを調べていけば、ひと言ふた言喋ってくれるようになった。

それにしても、このイチローの本が話題になるのもわかる。ページごとにイチローの印象強いコメントが262紹介されてある。262は言うまでもなく、イチローが昨年記録したヒット数。本の帯に、「宮里藍選手が共感を受けた一冊」とあるように、アスリートも参考になるだろう。自分も知り合いの騎手に一冊進呈した。

紹介しだすとキリがないのだが、
“やっている最中にプレッシャーからときはなたれることは不可能です。
そこから抜けだす方法はない。
苦しみを背負ってプレイするしかありません。”

ここ数年、大試合の前に、「楽しみたい」とか「楽しんでやる」とかコメントするアスリートがいるが、違和感があった。イチローの言葉には納得できた。実際、

“たのしんでやれ、とよくいわれますが、
ぼくには、その意味がわかりません。”

というコメントもあった。

この本を企画した編集者はツボを心得ている。イチローのコメントに感銘する人は多い。イチローを主人公にした本をつくろうと考える編集者も何人もいたはず。しかし、このように、1ページに1コメントで本をつくるという、誰もが思いつきそうでいてこれまで刊行されていない本をつくった。イチロー本を企画していた他の編集者は悔しい思いをしているはずだ。

東京へ収録に行くのがしんどい時などは、イチローのこのコメントを思い出そう。

“ぼくも、グラウンドに行きたくない日はたくさんあるのです。
そのときには職業意識が出てきます。
「仕事だからしょうがない』と、自分に言い聞かせるときもあるのです。”
 (「  』になっているのは、原文に従った)。


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